社会保険労務士実務

年金受給額の「平均」に、自分の暮らしは入っているのか?

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新聞やネットニュースを通じてよく目にする『平均の年金受給額』ですが、果たして私たちは今の仕事を続けていれば、その『平均値』に達することができるのでしょうか?

1.年金の平均額と中央値

まずは、最新の年次資料を確認していきます。
【表1】

年金の区分平均月額中央値が含まれる範囲
厚生年金〈第1号・基礎年金を含む〉150,289円
男性169,967円
女性111,413円
14万円以上15万円未満
国民年金〈基礎年金部分〉59,310円6万円以上7万円未満

出典:厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」参考資料3・4(本文26~27頁)
※中央値が含まれる範囲は公表された年金月額別の人数分布から筆者集計。2026年9月29日時点。


ここで注意しておきたいのが、厚生年金の平均月額150,289円には、既に基礎年金部分が含まれています。
皆さんもご存知のとおり、いわゆる「2階建て」の年金制度ですが、上記の表を見て、「私は会社員だから、国民年金(59,310円)と厚生年金(150,289円)が同時にもらえるんだ。」と勘違いしないようにして下さい。

2.医療福祉で働く人の給与

次に、医療福祉分野の4職種に絞って給与額をみていきます。
【表2】

職種平均年収の換算額
看護師524.7万円
施設介護員388.0万円
訪問介護員・ホームヘルパー381.9万円
介護支援専門員・ケアマネジャー441.3万円

出典は、各職種をクリックして参照できます。また、都道府県別の統計データも参照できます。
job tagの統計・算出方法(令和7年賃金構造基本統計調査を基にした全国の年収換算額)

上記の表は、あくまで月々の給与と賞与等から換算した、税・社会保険料を引く前の金額です。
一般労働者の集計であり、短時間勤務の方を含めた全員の平均ではありません。
また、職種ごとに年齢構成なども異なっています。
この金額を見て、「そんなに貰ってないけど(怒)」と私は思いました。

3.この給与水準なら、年金はいくらになるのか?

感情は一旦さておき、ここから【表2】で示した平均年収から具体的な年金額を試算していきます。
ただし、試算条件を以下に固定します。
・65歳から受給し、繰上げや繰下げはしない。
・厚生年金の加入期間中の平均標準報酬額を、上記の平均年収水準とする。
・厚生年金への加入期間は、40年間と30年間で比較する。
・厚生年金の計算の基礎のなる全加入期間を、平成15年4月の総報酬制導入以後の期間に固定する。
・基礎年金は、どちらも40年分を満たした満額(84万7,300円=令和8年度の満額)とし、30年モデルでも、残り10年は国民年金保険料を納め満額を確保した想定とする。
・令和8年度時点の金額や計算式を用い、将来の賃金や物価、年金額の改定は反映しない。

すると、このような試算結果となりました。
【表3】※金額は全て月額。

職種厚生年金40年の場合厚生年金30年の場合
看護師約16.6万円約14.3万円
施設介護員約14.1万円約12.4万円
訪問介護員約14.0万円約12.3万円
ケアマネジャー約15.1万円約13.1万円

試算根拠:日本年金機構「報酬比例部分」

この試算結果より、【表1】の厚生年金の平均月額の値と比べ、-6.6%から+10.8%と、概ね±10%前後に収まることが分かりました。

4.手取りはさらに減る

【表3】の試算結果は、毎月の年金の「手取り額」ではありません。
つまり、ここから税金や保険料を負担していきます。
以下、さらに前提条件を付け加えながら手取り額を試算していきます。
・宮崎県都城市在住、65〜74歳、単身・扶養家族なし。
・収入は老齢基礎年金・老齢厚生年金のみ。
・国民健康保険に加入し、介護保険料を納付。
・前年も同額の年金収入があり、退職前の給与所得はない。
・基礎控除・社会保険料控除を適用し、医療費控除や障害者控除等は含めない。
・令和8年度の制度で試算。住民税の計算に使う前年の社会保険料は、今回算出した年額と同額と仮定。
【表4】

モデル額面の年金国民健康保険税介護保険料住民税等※手取り
平均月額を用いた場合約150,300円約5,800円7,750円約1,200円約135,500円
看護師約166,500円約9,700円7,750円約2,400円約146,700円
施設介護員約141,500円約4,600円7,750円約500円約128,600円
訪問介護員約140,400円約4,500円7,750円約500円約127,700円
ケアマネジャー約151,200円約6,000円7,750円約1,300円約136,300円

※住民税等には、市民税・県民税の他、森林環境税を含みます。
出典:国民健康保険税率 – 宮崎県都城市ホームページ
出典:介護保険料について 都城市の所得段階表(本文2頁)
出典:個人市民税・県民税の課税方法を紹介します – 宮崎県都城市ホームページ

この試算結果より、手取り額はおよそ1万5,000円ほど少なくなりそうですね。
ちなみに、今回の全モデルで公的年金等控除110万円を差し引くと、令和8年度の所得税の基礎控除額104万円を下回るため、所得税は発生しません。

出典:「高齢者と税」- 国税庁ホームページ
出典:「基礎控除」- 国税庁ホームページ

5.年収を刻んで考えてみる

次は、40年間の平均年収を50万円ごとに刻んだ試算を行います。条件は、【表3】と同様です。
【表5】※全て額面。

40年間の平均年収〈仮定〉厚生年金の報酬比例部分・月額基礎年金を含む合計月額
524.7万円約9.59万円約166,500円
450万円約8.22万円約152,800円
400万円約7.31万円約143,700円
350万円約6.39万円約134,600円
300万円約5.48万円約125,400円

ここから税金や保険料が引かれます。

なかなかリアルなシミュレーションができました。
とはいえ、今回はかなり条件を限定しましたので、皆さんの状況と一致しない部分も多いと思います。
現役時代の収入や年金加入期間はもちろんですが、それ以外にも配偶者や子の有無、繰上げ繰下げ制度なども受給額に影響します。


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