社会保険労務士実務

【登壇報告】厚生労働省委託事業「建設業雇用管理研修:基礎講習」で講師を務めました。

社会保険労務士実務

 2026年10月29日、鹿屋市市民交流センターで実施されました、建設業雇用管理研修の基礎講習に、講師として登壇させていただきました。

 午前・午後を通じて約6時間、建設業における雇用管理の基本から、人材の確保や育成、働き続けられる職場づくりまで、幅広い内容をお伝えしました。

 今回は研修のご報告とともに、準備や講義を通じて改めて考えた、建設業と医療福祉分野に共通する課題についてご紹介します。

厚生労働省委託事業として行われる雇用管理研修

 本研修は、厚生労働省委託事業「令和8年度建設労働者雇用支援事業」の一環として行われるものです。

 基礎講習では、雇用管理責任者やその業務を補佐する方などを対象に、労働者の募集から雇い入れ、配置から退職に至るまで、雇用管理に必要な知識を学びます。建設業の担い手の確保や、雇用の安定につなげることを目的とした内容となっています。
 「雇用管理」というと、労働条件通知書の作成や社会保険の手続きなど、書類に関する業務を思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれません。
 しかし、その範囲はもっと広く、適切な人員配置、教育の進め方、労働時間の把握、健康と安全への配慮、職場の人間関係など、日々の仕事と深く結びついています。
 今回も、制度の説明に加えて、事例や考察の時間を設け、ご自身の職場に置き換えて考えていただくことを意識しました。

建設業の現状と、建設雇用改善法

 建設業は、住宅や道路などの整備を担い、災害時には復旧や復興の最前線に立つ、地域の暮らしに欠かせない産業です。
 一方で、担い手の不足や高齢化、若年者の確保・定着、熟練した技能の継承といった課題も抱えています。厚生労働省が2026年度からの計画として策定した「建設雇用改善計画(第十一次)」でも、若年労働者との確保と育成、技能継承が重要な課題に位置づけられています。
 こうした建設業の雇用を支える法律の一つが、「建設雇用改善法」です。正式名称は、「建設労働者の雇用の改善等に関する法律」といいます。
 この法律は、建設労働者の雇用の改善や能力の開発・向上、福祉の増進などを通じて、必要な労働力の確保と雇用の安定を図るものです。また、労働者を雇用して建設事業を行う事業所ごとに、雇用管理責任者を選任することも定めています。

 今回の研修では、この法律の考え方を土台に、労働条件や労働時間の管理、人材育成、建設キャリアアップシステム(CCUS)に加え、建設業務有料職業紹介事業や建設業務労働者就業機会確保事業についても取り上げました。
 そして、本研修(基礎講習)を受講された方には、建設業の「雇用管理責任者」として修了証が交付されます。

建設業と医療福祉に共通する課題

 今回、建設業の雇用管理をお伝えする中で、業界ごとの制度や働き方には違いがあっても、働く方を支えるために大切な視点には、多くの共通点があると改めて感じましたので、以下にまとめてみました。

1.人材の確保と、働き続けられる環境づくり
 建設業でも医療福祉でも、新しく人を採用することと、今いる職員が安心して働き続けられることは、つながっています。
 求人で伝える労働条件と実際の働き方が一致しているか。入職後に相談できる人がいるか。休暇を取得しやすいか。仕事への努力や成長が適切に認められているか。
 こうした日々の積み重ねが、職場への信頼をつくります。
 厚生労働省も、建設・看護・介護などの人材確保に向けて、雇用管理の改善や能力開発の支援を重視しています。人材確保を考える際には、求人の方法とともに、入職後の職場環境にも目を向けることが大切です。
2.専門的な技術や判断を、次の世代に引き継ぐこと
 建設現場には、経験を重ねることで身に付く技術や、安全に作業を進めるための判断があります。
 医療福祉の現場にも、患者様や利用者様の小さな変化に気付く観察力、状況に応じて対応する力など、経験を通して育つ専門性があります。
 そのような力を引き継ぐには、教える内容や段階を整理し、実践する機会と振り返る時間を設けることが必要です。
 新人が質問できることに加え、指導する側にも時間と支援があること。育成を担当者個人の工夫に委ねず、職場全体で支える仕組みが、どちらの業界でも大切だと考えています。
3.働く人の健康と安全が、仕事の質を支えること
 建設業では、作業をする方の健康状態や、現場での確認・連携が安全に関わります。医療福祉でも、職員の心身の状態やチーム内の情報共有は、患者様・利用者様に提供するケアと深く関わっています。
 労働時間を正確に把握し、休息を確保すること。業務の偏りを確認し、無理が生じているところを見直すこと。不調のサインに気づいた時に、早めに相談や支援につながること。
 働く人を守る取り組みは、その職場が提供する仕事やサービスを支える取り組みでもあります。
4.安心して報告・連絡・相談できる関係をつくること
 「分からない」「確認したい」「少し不安がある」、その一言を伝えられるかどうかは、仕事を進める上で重要です。
 例えば、経験の浅い職員が手順に迷った時、すぐに質問できれば、その場で確認して次に進めす。

 そのためには、質問を受ける側の対応や、日頃からの声のかけ方も大切になります。
 建設現場でも医療福祉現場でも、立場や経験の異なる人が協力して仕事をしています。役割や指示を明確にしながら、必要な報告や相談が届く関係をつくることは、安全と人材育成の両方を支えると考えています。

安心して働き続けられる職場づくりに向けて

 今回の研修は、業界ごとの特徴を理解した上で、働く人と組織を支える雇用管理を考える、貴重な機会となりました。
 ご受講いただいた方々、開催に携わられたタスクールPlusのご担当者様に、心より御礼申し上げます。
 コバルトブルー社会保険労務士事務所では、医療福祉分野を中心に、企業・事務所・各種団体の皆さまから、研修やセミナーのご依頼を随時受け付けています。
 雇用管理の基礎、人材の育成や定着、ハラスメント対策、労働衛生など、対象となる方や職場の課題、研修時間に応じて内容をご相談いただけます。
 研修をご検討の際は、当ホームページのお問い合わせ窓口より、お気軽にご相談ください。

参考資料・関連リンク

 本研修や制度について詳しく知りたい方は、以下の公式資料もご覧ください。

・厚生労働省委託業務「令和8年度建設労働者雇用支援事業」公式サイト

・建設労働者の雇用の改善等に関する法律

・第十一次建設雇用改善計画

・厚生労働省「人材確保対策」